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石のつぶやき507 内田 樹氏の記事 納得 [平成阿房伝]

9月11日(火)12   朝日新聞朝刊


 わたしの紙面批評 朝日新聞紙面審議会委員  内田 樹(うちだ たつる)さん

    領土問題の緊迫化              背景には政権基盤と米国 新聞は報じたがらない


 竹島と尖閣で領土をめぐる問題が緊迫化している。領土問題を論じる場合につねに念頭に置くべきだが、新聞があまり書いてくれないことが二つある。それを備忘のためにここに記しておきたい。
 第一は領土問題の解決方法は二つしかないということである。一つは戦争。勝った方が領土を獲得する。もう一つは外交交渉。双方が同程度の不満を持って終わる「五分五分の痛み分け」である。
 どんな領土問題にもそれ以外の解はない。ただし、両国の統治者がともに政権基盤が安定しており、高い国民的な人気に支えられている場合にしか外交交渉は行われない
 中国とロシアの国境紛争は先年「五分五分の痛み分け」で解決したが、これはプーチン、胡錦濤という両国の指導者が「自国領土を寸土とて譲るな」という国内のナショナリストの抵抗を押し切れるだけの安定した統治力を有していたからできたことである。
 韓国の李明博大統領は支持率20%台に低迷していたが、竹島上陸で最大5ポイント稼いだ。政権浮揚のためには理由のある選択だったのだろうが、その代償に大統領は外交交渉カードを放棄した。本当に力のある政治家はこんなことはしない。
 尖閣についても同様である。中国政府が今強い出方をしているのは内政に不安が不安があるからである
 72年の日中共同声明で、周恩来首相は「日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言」し、「主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則」を確認した
 78年の談話で鄧小平副首相は尖閣について、「こういう問題は、一時棚上げにしてもかまわない」と述べた。「次の世代は、きっと我々よりは賢くなるでしょう。そのときは必ずや、お互いに皆が受け入れられる良い方法を見つけることができるでしょう」 これはどんな政治家でも言えるという言葉ではない。政権基盤が安定しており、補償問題・領土問題でどのような譲歩カードを切っても、それによって国内の統制が乱れる不安のない「つよい政治家」にしか口にすることのできない言葉である。
 どこの国でも、領土問題の炎上と鎮静は政権の安定度と相関する。その意味で領土問題はつねに国内問題である。これが第一だ。

 第二も新聞が書きたがらないことなので、ここに大書しておく。それは日本の場合、領土問題は2カ国問題ではなく、米国を含めた3カ国問題ということである。 米国は竹島、尖閣、北方領土のすべての「見えない当事者」である。これらの領土問題について、問題が解決しないで、日本が隣国と軍事的衝突に至らない程度の相互不信と対立のうちにあることによって自国の国益が最大化するように米国の西太平洋戦略は設計されている。 もし領土問題が円満解決し、日中韓台の相互理解・相互依存関係が深まると、米国抜きの「東アジア共同体」構想が現実味を帯びてくる。それは米西戦争以来120年にわたる米国の西太平洋戦略の終焉を意味している。米国は全力でそれを阻止しなければならない。 私は米国が「悪い」と言っているのではない。自国の国益を最優先に配慮して行動するのは当然のことである。9月4日朝刊3面「米、尖閣対立に危機感」のような記事もあったが、私がここで言う視点とは違う。領土問題で、米国の国益と日本の国益が背馳することもあるという自明のことを新聞は報じたがらないので、ここに記すのである。


ふたこと:蓋し、至言である。 新聞の半分以上を宣伝で埋め尽くし、「近未来通信」の詐欺を増幅した。今の広告にどれだけの信頼性があるかもの、検証もない。恥も外聞もなく己の利益に汲々とするその姿勢に、未来はない。この続きは電子版で、という表現が多くなった。新聞は購読しているものにとって完結したものでなければならない。3670円、これが常識的に安いものであるはずがない。さらに目を覆うべきは、劣化である。わたくしは、社説、天声人語等、上から目線のエリート然としたものは読む気にもならない。官僚の手先となって、罵詈雑言を吐く。  それでも読んでいるのは、こういう記事がたまさかあるからである。
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