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石のつぶやき1096 モーレツからビューティフルへ? [平成阿房伝]

ここまで劣化したか、日本の労働環境

 ずいぶん前のことでありますが、こんな言葉がテレビのコマーシャルに流れていました。「モーレツからビューティフルへ」です。DENTSU INC.作です。傑作でしょう?
 企業戦士、猛烈社員がもてはやされ、その結果ワーカーホリック(仕事中毒とでもいうのでしょうか)となる労働者が続出したのです。デジャブですよね。で、大阪万博、これも電通様々の企画だったんです。この万博後、上のキャッチフレーズが富士フィルムのCMとしてテレビから流れてきたのです。かっこいいでしょう?

それから40年。日本の労働環境はさぞ素晴らしい「ビューティフル」なものになっているはずですよね。それを示す素晴らしい演説があります「(先人たちは)世界第3位の経済大国、世界に誇る自由で民主的な国を、未来を生きる世代のために創り上げてくれました」(2017年1月20日施政方針演説より)。これを聞けば、どんな素晴らしい誇れる「美しい国」になったかわくわくします。

ところがこんな記事が・・・。
『10月8日16  08時43分 朝日デジタル

電通の女性新入社員自殺、労災と認定 残業月105時間



 広告大手の電通に勤務していた女性新入社員(当時24)が昨年末に自殺したのは、長時間の過重労働が原因だったとして労災が認められた。遺族と代理人弁護士が7日、記者会見して明らかにした。電通では1991年にも入社2年目の男性社員が長時間労働が原因で自殺し、遺族が起こした裁判で最高裁が会社側の責任を認定過労自殺で会社の責任を認める司法判断の流れをつくった。その電通で、若手社員の過労自殺が繰り返された

 亡くなったのは、入社1年目だった高橋まつりさん。三田労働基準監督署(東京)が労災認定した。認定は9月30日付。

 高橋さんは東大文学部を卒業後、昨年4月に電通に入社。インターネット広告を担当するデジタル・アカウント部に配属された。代理人弁護士によると、10月以降に業務が大幅に増え、労基署が認定した高橋さんの1カ月(10月9日~11月7日)の時間外労働は約105時間にのぼった

 高橋さんは昨年12月25日、住んでいた都内の電通の女子寮で自殺。その前から、SNSで「死にたい」などのメッセージを同僚・友人らに送っていた。三田労基署は「仕事量が著しく増加し、時間外労働も大幅に増える状況になった」と認定し、心理的負荷による精神障害で過労自殺に至ったと結論づけた。

 電通は先月、インターネット広告業務で不正な取引があり、広告主に代金の過大請求を繰り返していたと発表した。担当部署が恒常的な人手不足に陥っていたと説明し、「現場を理解して人員配置すべきだった」として経営に責任があるとしていた。高橋さんが所属していたのも、ネット広告業務を扱う部署だった。

 電通は00年の最高裁判決以降、社員の出退勤時間の管理を徹底するなどとしていたが、過労自殺の再発を防げなかった。代理人弁護士によると、電通は労基署に届け出た時間外労働の上限を超えないように、「勤務状況報告書」を作成するよう社員に指導していたという。電通は「社員の自殺については厳粛に受け止めている。労災認定については内容を把握していないので、コメントは差し控える」としている。(千葉卓朗)』


 NHKが最初に流したのです。なぜNHKなのか、アホな会長の直接的な介入はあっても広告代理店の影響を直接受けることはないのです。テレビ、新聞等は広告代理店の支配下にあるからです。だからこれは後追い記事です。NHKが流したからです。それも最高裁の判決で漸くたどり着いた結果です。もし敗訴していたら、ニュースになることはなかったでしょう。労災認定は企業側に有利で、働く側にはハードルが高いのです。違法労働をさせる原因でもあるのです。最高裁まで控訴しなければならなかった遺族にとって悲劇以外なにものでもありません。我が子が自殺するのです。それも仕事でです。あり得ないことが日本の企業の中に蠢いているのです。英語にでもある「karoshi」が蔓延しているのです。その原因が際限もない残業なのです。その残業時間は手当なしの場合が多く、手当があっても決められた時間の範囲内なのです。昔からサービス残業という言葉がありました。残業手当なしです。そのような「美しい文化」がいまだに残っているのですね。というより今の方がもっと酷いか。今頃になって安倍政権は「働き方改革」を標榜しています。過剰残業で身も心もずたずたになり、鬱病となっていくのです。死ぬために働くようなもんです。

 労働基準法に、「労働基準法32条には次のように定められています。 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間(特例措置対象事業場においては44時間)を超えて、労働させてはならない。 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない」と定めている。

時間外労働協定(36協定)を締結したときの労働時間の延長の限度について示しています。時間外労働は残業時間については、原則として月45時間、1年で360時間が上限となりますが、36協定に特別条項という項目を設けることによって、一時的に需要がある場合、45時間を超えた残業を行わせることができるようになります。時間外労働には割増賃金を支払わなくてはなりません。時間外労働の割増賃金割増率は2割5分(25%)以上〔月60時間を超える時間外労働については5割(50%)以上〈中小企業は猶予〉、休日労働の割増賃金の割増率は3割5分(35%)以上です。
 
 というような取り決め、36協定が締結されている場合です。36協定があっても、電通のように法律を無視するのです。サービス残業がどれぐらいか、途方もない数字だと思います。で、残業代を支払うのは36協定の基準だけです。電通が無視しているのですから他の大手も似たり寄ったりなのでしょうか。ただ大手の工場労働ではこの協定は生きていると思います。

 しかし次の記事は変ですよね。
『1月20日(金)17    朝日新聞朝刊

「残業できる?」と質問 36.6%

      連合調査 企業、採用面接時に


 「きみ、入社したら残業や休日出勤はできる?」

 採用面接の際にこんな質問をしている企業が3割超にのぼることが、労働組合の中央組織・連合の調査でわかった。大半の企業は男女を問わず質問しているが、連合は「結果的に、残業しにくい人が多い女性を採用しないことに繋がりかねない」と問題視している。

 調査は、新卒採用や転職時の就職差別の実態を調べる目的で、昨秋に加盟する組合を対象に実施。3648組合から回答を得た。

 面接で残業や休日出勤ができるかを聞いている企業は36.6%、転勤ができるかを聞いている企業は43.9%にのぼった。結婚しているか、予定があるかをたずねている企業も11.9%あった。

 面接で家族の職業や収入を聞いている企業は12.4%本籍地や出生地をたずねている企業も7.6%戸籍や住民票の提出を求めている企業も8.7%あり、いずれも2008年の前回調査時から比率はほとんど変化していない。連合は「就職差別につながるおそれがある」と批判。今後、経営側に是正を働きかけるという。(大内奏)』


 採用面接でこんなことを聞いているのか、驚くばかりです。企業の傲慢さの現れです。日本には労働組合が存在しないことを如実に物語っています。日本最大の労働組合:連合がこんなアンケートの結果を容認しているということです。日本の労働組合は、国鉄がJRとなって消滅していったのです。労働者にとって悲惨な状況になったのは、当然の結果でしょう。
 端から残業できないやつはいらんというのです。休職者は「はい」としか答えようがない。これが過労死のプレリュードとなります。採用されれば残業するのは当たり前の世界が待っています。酷ければ残業代が只。良くても規定の範囲内の残業代で、後はサービス。残業が必要ということは、人員が不足しているからです。それを補足するのが採用なのですが、人員不足を少ない人数で利益を最大限に上げようとするのが有能な経営者とされる。新規に少なく採用して、最大限働かせて員数を削る。残業がなければまわらないということが常態となるのです。
結婚の予定を聞く企業もある。プライバシー侵害も甚だしい。結婚するやつはいらん。結婚を予定している女性はなんと答えてよいか、迷います。
家族の職業や収入を聞いたり、本籍地や出生地をたずねたり、戸籍や住民票の提出を求めている企業もある。論外である。人権侵害です。これら全て、企業のやりたい放題の風潮を許しているのが、悲しい「労働組合」の姿なのでしょう。
 採用面接は、求職者だけが対象です。家族の職業や、本籍地や出生地は一切関係ありません。聞くということは、それによって採用しないという差別をするということです。そのようなことを聞く企業は、差別のもとになる資料をもっているということです。そういうことはあってはならないと・・・。差別であり、人権侵害だからです。醜悪そのものです。日本企業はもとより日本人がこのことを自覚しない限り、世界から尊敬を得られる国にはなれないでしょう。「美しい国」には・・・。    
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