SSブログ

石のつぶやき647 5月3日、考えてしまう [平成阿房伝]

5月3日(金)晴後曇、小雨
 朝10時頃何となく酒を飲みたい気分になった。少しなら、いいかという誘惑に負けてしまった。悪魔は都合のいいように囁く。わたしは医者に言い渡されていた。このままでは肝硬変になると。最近でもわたしの血液検査の結果をみて、3人の医者が酒を止めろ、休肝日を設けろと口々に言う。その通りなのであるが、つい呑んでしまうのだ。やはり阿呆なのだ。アホは死ななきゃ治らないときたもんだ。
 いつも失敗ばかりしている野菜作りに今回は、鉢植えにしようと思い立ってその辺に転がっている鉢を集めようとした。ふとタケノコが、気になった。毎年この季節になると出てきたタケノコを思い切り踏み込んだり、蹴っ飛ばしたり。隣がわずか10本ほどの竹藪を迷惑も無視して維持している。その根っこが闖入してくるのだ。まさしく侵略なのだ。そして陣地を広げ、どんどん繁殖する。まさしく帝国主義なのだ。毎年毎年侵略者の手先を殲滅してきた。しかし敵は老獪である。全滅させたと思って安心していると、とんでもない遠いところに「おいでおいで」する。翻弄されている。このタケノコがうまければ食するのであるが、えぐいのである。いつもは懇意につき合いをしている方から、赤土の竹藪のタケノコを頂く。少々出過ぎていてもおいしく頂いた。ところが今年は体調が優れず、毎年欠かさなかったタラの芽の収穫を諦めた。タケノコもその延長線上にあった。今年は諦めていた。
着替えて見に行くと、タケノコは静かに頭をもたげ侵略の証を示そうとしていた。毎年なら何㍍にも達しているのに今年は、精々50センチ、地中から芽を出したばかりのもあった。スコップで掘り起こし、ふと帝国主義のえぐさを今一度かみしめたいとおもうた。
それだけなら意趣返しでしかない。おのれの貧しさでしかない。そこまではおもわんなんだが、フキがあまりにも多く生えている。フキを添えようと思ったのである。一握りの蕗を収穫する。
 酒を飲みながら、タケノコを湯がき、フキを熱湯にくぐらせる。タケノコのあくを抜くのに糠がいる。これは漬け物用に残っていたものを使う。タケノコを湯がきながら、フキの筋を取る。結構時間がかかり、タケノコがあがってしまった。その後、昼飯の段取りをする。タマネギを刻み、白菜をぶつ切りにする。それを一番小さな炎にかける。じっくりと煮て、冷凍してあった飯を加える。出汁を加えてさらに煮込む。それが昼飯だ。
 昼飯を食った後、予定の鉢を集め、今年の野菜作りのもとをつくる。鉢は13個ぐらいか、まだいくらでも転がっている。死んだ母が残したものだ。入っている中身の土を「とおし」(篩)に入れふるう。小さな根を棄て、粗い土に分ける。それを繰り返し全ての鉢の土を選り分ける。それが終わった後、前の生ゴミの土を掘り返してあったのを篩にかけ、鉢の土にする。それを野菜の基礎とする。途中雨が降ってくる。遠慮しがちである。結局雨にはならなかった。
 こんな穏やかな日を過ごしたと感じたのは、体調を崩して以来初めての経験だった。こんな日をいとおしく思う。こんな日々が続くことは当然のこと、当たり前と確信していた。ところが、そのわたしの安逸な日常を侵す不穏な足音が忍び寄り、明らかな音となった。かまびすしいのである。
 わたしの安逸な生活を脅かす、果ては破壊する波が襲ってきている。それが、恐れていた憲法改正という狼煙である。9条ではなく、96条なのである。『「国会が憲法改正を企てた際には、必ずレファレンダム(国民投票)にかけることを求めている点にある(96条)。ドイツは上下両院の3分の2以上の賛成が必要。それを、96条を改正して、国会のハードルを通常の立法と同様な単純多数決に下げてしまおう、という議論が、時の内閣総理大臣によって公言され、政権与党や有力政党がそれを公約として参院選を戦おうとしているのである。 これは戦慄すべき事態だといわなくてはならない。』(石川健治、朝日新聞5月3日)。
 このような言を待つまでもなく、今までの自民党政権は、一番守るべき日本国憲法を蔑ろにしてアメリカの属国としてオキナワ、奄美、小笠原を切り捨てたことに何の恥じらいもなかった。さらに砂川闘争で米軍基地が違憲となるのを恐れた日米のトップはそれを退けたのである。それ以来、司法は時の権力の恣意となった。いわゆる自民党独裁の形となったのだ。それはアメリカのいうとおり、官僚のいうとおり、日本国民に何の利益もたらさなかった。それが今も続いている。安倍もその流れ、延命するための政策であった。ところが安倍は憲法改正にのみ、集中してきた。それが現実味を帯びてきた今、わたしたちは何ができるだろう。行動しても、結局選挙では負けてしまう。こんなジレンマのまま鬱々と日々を過ごすこととなるのか。安息な日々の暮らしは、音を立てて崩れようとしている。どうしよう。タケノコのえぐさだけは再認識した5月3日であった。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:blog

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。