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石のつぶやき728 ハイパーインフレを目論む自民党と官僚 [平成阿房伝]

10月29日(火)13 朝日新聞朝刊
    
 耕論      読み解き経済

経済史を研究する
                       岡崎 哲二さん

  公債「楽観論」は80年前の轍

 日本の政府債務残高は2012年度末に991兆6千億円に達した。名目GDP(国内総生産)の208%にあたり、太平洋戦争末期における政府債務残高のGNP(国民総生産)比204%に匹敵する。現在の日本は、近代日本経済史上2回目の深刻な累積政府債務に直面していることになる。

  事実上の「税に」に

 1回目にあたる終戦時の累積政府債務は、そのほとんどが戦後の急激なインフレによって実質的に解消された1944年から49年にかけて、日本の卸売り物価は約90倍となった。その結果、政府債務残高は49年度末にはGNP比で19%まで低下したのである。これは、直接・間接に政府の債権を持っていた国民にインフレによる事実上の税を大規模に課すことで、累積した政府債務を一挙に縮小させたことを意味する。
 経済復興と高度経済成長で、政府債務残高のGDP比は低下を続け、東京オリンピックが開催された64年度末には4.4%となった。65年不況時の赤字国債発行を転機に上昇したが、ペースは緩やかなものにとどまった。再び明確な上昇傾向を示したのは75年以降である。その後、バブル最盛期の88~91年度を除き、毎年上昇を続けて現在に至っている。
 それでは、1回目の政府債務累積はなぜ起きたのだろうか。政府債務の増加は1920年代の長期不況期に始まった。日露戦争により70%を越えた政府債務残高比率は、財政緊縮と第一次世界大戦期のインフレを伴う経済成長によって、19年度末にいったん23%まで低下した。以後、デフレと不況の過程で上昇に転じ、32年度には、高橋是清蔵相による「高橋財政」の影響が加わって58%となった。
 注目すべきは、33年度以降、政府債務残高比率が数年間にわたって安定したことである。高橋財政の景気刺激策によって、経済成長率が上昇するとともに緩やかなインフレが続いたのが一因だが、もう一つ理由があった。高橋蔵相が34年度予算編成時から、財政規律を維持するために公債収入を前年度より減額する「公債漸減」方針を採り、36年度まで維持されたことである。
  根拠なき先送り

 この流れを変え、再び公債発行の増加にかじを切ったのは、2・26事件後に成立した広田弘毅内閣の蔵相・馬場鍈一であった。馬場は公債漸減方針を明確に放棄した。32~36年度に8億~9億円だった新規国債発行額は、37年度に一挙に22.6億円に増加した。
 政策転換の背景には馬場自身の財政経済政策に関する持論があった。35年に東京帝国大学で行った講演で、「私は実は公債をそんなに恐れない。恐れたところで出さねばならぬものは出さねばならぬ」と述べ、公債発行の大きな要因となっていた軍事費について、「私は国防費に対して不生産的経費といふ言葉は使はない」「国旗の翻る所即ち(すなわち)我が商権の進出する所、或は(あるいは)民族の進出する所だと考えていけば、寧ろ(むしろ)生産的だと言った方が宜しい(よろしい)ぢゃないか」と論じた。
 公債発行で軍事費を含む財政支出を賄っても、中長期的には市場の拡大を通じて経済成長をもたらし、税の自然増収につながるのだから問題ないという議論である
 こうした楽観論は、戦争が拡大し、財政支出の増加がさらに著しくなると政府全体に広がった。41年、本来、財政規律を守る立場にあるべき大蔵省主計局の谷口恒二局長は、開戦以来累計250億円に達していた公債発行額について「支那事変の解決、大東亜共栄圏の確立された暁に於ける我国力の増進を考えるならば、この程度の公債は我国財政にとって懸念の要のないところである」と述べた。
 戦前・戦中期に生じた1回目の政府債務の累積過程では、今日から見れば根拠に乏しい楽観論が、多額の公債発行を継続することの正当化に一役買った。今日においても、増税や財政支出削減を避けたいという政治的立場から、将来の経済成長や、(マイルドでむしろ望ましい)インフレが政府債務の問題を解決するという言説が提起されがちである。しかし、そのような希望的観測に基づいて財政再建を先送りし続ければ、前回の政府債務累積時の轍(てつ)を踏むことになりかねない。


ふたこと:復興特別所得税が国会で可決された途端、整備新幹線、第二名神が満額で復活した。消費税増税が可決された。増税時の不況対策として大規模な財政支出をすると言って当面5兆円を使うという。消費税増税は社会保障と一体、財政再建策として野田と自民党が秘密裡に妥協したものであったはずだ。ところが安倍政権は財政出動はしても、それらには全く支出する気はないのである。国土強靱計画などを持ち出して多額の政府公債の発行を目論んでいる。政府債務は膨らむばかりである。  2%インフレと称し、膨大な財政出動を実施している。同じ轍を踏んでいる。というより、そのものである。戦前戦後変わらぬ官僚の無責任さに自民党が手玉にされているということだ。このままいけば、ハイパーインフレが待ちかまえている。悲惨な目に遭うのはまた国民ということだ。2度も騙される、つくづくお人好しの日本人である。
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